国際相続コラム

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日米の不動産登記制度について教えてください

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日本と異なり、アメリカには複数の所有権や登記制度があります。それぞれの特徴と制度の違いについて解説します。

また、アメリカのコンドミニアム等は敷地権が借地のことも多く、購入時には注意が必要です。

1.日本の不動産所有権の特徴

⑴ 一般の不動産

ア 所有権の内容

物権(物に対する権利で、一定の物を直接的に支配する権利をいいます。)については、民法に定めた種類のもの(所有権や占有権など)しか原則として認められません(物権法定主義)。

所有権は、一つの物に対して複数が成立することはありません。

イ 建物に対する権利

日本では、建物と土地は常に別個独立の不動産とされ、それぞれ独立して所有権の対象となりますので、別々に譲渡が可能です。そのため、不動産登記には、土地の表示に関する登記と、建物の表示に関する登記があります。

⑵ 区分所有不動産

マンションの一室など、一棟の建物の一部分は、一定の要件(一棟の建物に構造上区分された数個の部分で、独立して住居、店舗、事務所又は倉庫その他建物としての用途に供することができるもの)を充たすものについては区分所有権という独立の所有権の目的となります。

2.アメリカの不動産所有権の特徴

⑴ 一般の不動産

ア 不動産権の内容

コモン・ロー系の国々では、不動産法も、州ごとに、裁判所の判例の集積であるコモン・ローに根拠を持ち、制定法があるとは限りません。また物権と債権の区別も明確ではなく、多様な種類の不動産所有権が認められます。アメリカの所有権は占有権に近い権利と言われ、これは土地の所有権を国王が有していた頃の名残と言われています。

イ 建物に対する権利

所有権の対象となる不動産(Real Property)は、土地(Land)と土地附属物(Things Attached to Land)から成り、建物は土地附属物とされて、日本のように独立の不動産とはなりません。例外的に借地(Ground Lease)による建物は独立の不動産とされますが、建物の登記をすることはできず、借地の登記をすることになります。

⑵ 区分所有不動産

日本と同じように、コンドミニアムなど一棟の建物の一部分については、一定の要件で区分所有権の対象となり、登記も可能です。

なお、ハワイ州では、コンドミニアムの土地の権利は(日本の所有権と同様の権利である)絶対的単純不動産権でなく、借地であることも多いので、土地の賃借期間が延長なく終了すると、建物を収去して明け渡すか、建物の所有権を譲渡することが必要となるので注意が必要です。

3.日本とアメリカの不動産登記制度の違い

⑴ 日本の不動産登記

ア 登記制度と公信力

日本では不動産登記法に基づく全国共通の登記制度が存在します。もっとも、不動産登記には公信力はありませんので、買主が虚偽の登記を信用して取引をした場合、買主は不測の損害を被ることになります。

イ 対抗要件

登記は第三者への対抗要件となります。不動産が二重譲渡された場合には登記の先後により優劣が決まります。

⑵ アメリカの不動産登記の概要

ア 登記制度と公信力

アメリカの不動産登記は州法に規定され、内容は州や地域ごとに異なります。

不動産登記システムには大きく2種類あり、

①売主の買主に対する譲渡証書(Deed)の謄本が年代別に登記所に編綴され、譲渡人名簿と譲受人名簿に基づき遡って譲渡証書(Deed)を調査することを前提とする証書登録制度(Recording System)と、

②売主の申請に基づいて(土地裁判所や土地委員会などの官庁に所属する)調査官が土地上の権利について実質的審査を行い、その権利証明書(Certificate of Title)と譲渡証書(Deed)を登記所に提出し、登記所は土地別にこれを登記するトレンス・システム(Torrens Title System)があります。

二つの制度が併存する州や地域もあります。

登記の効力も各州によって異なりますが、日本と同様、公信力はありません。したがって、無権利者との取引は無効となります。

イ 対抗要件

不動産の二重譲渡がなされた場合、日本と同じように純粋に登記の先後によって優劣が決まる制度(Race Statutes)と、登記を先に備えていても、売買契約の存在を知って取引をしていた場合には権利を取得できない制度(Notice Statute、 Race-Notice Statute)があり、州によって異なります。

ウ 権原保険

アメリカの不動産取引では、権原保険が発達しており、虚偽登記や二重譲渡等があっても、買主は不測の損害を回避することが可能となります。

4.現地専門家の活用の必要性

このように、不動産法も登記手続も日本とアメリカでは大きく異なります。日本の不動産に関する知識は必ずしも海外では通用しませんので、投資の意思決定に当たっては、それぞれの国や地域の専門家に依頼をすることが不可欠です。

 

 

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