国際相続コラム

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日米の相続税や贈与税の納税義務に時効はあるのでしょうか

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日本では、更正、決定、賦課決定などの賦課権(納税義務の確定)には除斥による期間制限が、確定した納税義務の履行を求める徴収権には時効による期間制限がそれぞれ認められています。

アメリカでも同様に期間制限が認められていますが、日本と異なり、無申告の場合に時効は完成しません。以下に詳しく解説します。

1.日本の税金の時効、除斥期間

⑴ 更正・決定の除斥期間

賦課権(納税義務の確定)の期間制限には、除斥制度が採用されています。

除斥とは、期間の経過のみで権利が消滅することをいいます。ですので、時効の完成猶予や更新はなく、納税者の時効援用も不要です(一方、時効は、時効期間の経過に加えて当事者による時効援用があって初めて権利が消滅します)。

税務署長による更正・決定は、無申告の場合の決定は法定申告期限から5年(たとえば相続税については相続開始があったことを知った日の翌日から5年10か月)、過少申告の場合の更正は法定納期限から3年(同様に、相続開始があったことを知った日の翌日から3年10か月)の除斥期間経過により消滅します。

また、贈与税の更正・決定は、法定申告期限から6年の除斥期間経過により消滅します。

ただし、相続税も贈与税も、申告財産を故意に隠匿するなど、偽りその他不正の行為によりその全部若しくは一部の税額を免れたと評価される場合には、法定納期限から7年の除斥期間経過により消滅します。

⑵ 更正の請求

更正の請求とは、①納付税額が過大であるときや、②還付金が不足するときに、申告等によって確定した課税標準等又は税額等を自分にとって有利に変更するよう税務署長に求めることをいいます。

更正の請求は、原則として法定申告期限から5年以内に限り行うことができます。

もっとも、相続税や贈与税の申告では、後から基本的な事実関係に変更が生じることで課税標準や納付税額が変わってしまうことはよくあります。(たとえば未分割財産の分割があったり、認知による相続人の異動があったり、遺留分侵害額請求額の確定があった場合など)。
そこで、相続税や贈与税の更正の請求は、課税価格及び相続税額が過大となった事由が生じたことを知った日の翌日から4か月以内であればすることができます。

しかし、贈与税の更正の請求については、法定申告期限から6年以内にする必要があるとされています。

⑶ 徴収権の時効消滅

徴収権とは、内容の確定した納税義務の履行を求め、その徴収を図る国の権利です。徴収権の期間制限には時効制度が採用されており、法定納期限から5年間行使しないことによって時効消滅します。還付金等の還付請求権も同様の規定に従って時効消滅します。

贈与税については、申告書の提出期限から1年は時効が進行しないこととなっています。

また、「偽りその他不正の行為」によりその全部又は一部の税額を免れたり還付を受けたりした場合の時効は、法定納期限から2年間進行しません。

よって、虚偽申告など不正行為があった場合の時効は法定納期限から7年となります。

除斥期間や時効消滅を期待することは危険です。

仮装や隠ぺいに基づいて過少申告や無申告とした場合、延滞税が課せられ、またこれに加えて、過少申告の場合は過少申告加算税に代えて35%の重加算税が、無申告の場合は無申告加算税に代えて40%の重加算税が課されます。

また租税犯として起訴される可能性もあります(公訴時効は脱税犯の場合は7年)。このように厳しい罰則が科されていますので注意が必要です。

2.アメリカの税金の時効

⑴ 連邦税の査定の時効

アメリカ連邦税についても同様に消滅時効の制度があります。

アメリカ連邦税については、税務申告書提出(原則として提出期限日)から3年以内にIRSが課税査定(Tax Assessment)の送付や裁判上の訴えをしない場合、納税義務が時効により消滅します。

もっとも、時効期間については以下の例外があります。
① 不正もしくは虚偽の申告書が提出された場合、時効は開始しません。
② 申告書の提出がない場合、時効はありません。
③ 申告書において総収入の25%以上が申告漏れをしていた場合には、時効期限は6年に延長されます。

税務申告をしない場合や詐欺的申告の場合には時効がなく、延滞加算税などが付されることになります。このように厳しい制度となっていますので注意が必要です。

遺産財団の人格代表者は、相続開始後9か月以内にIRSに対してForm706を提出することが求められます。なお、人格代表者が任命されない場合には、財産を相続した相続人に申告・納税義務が認められます。

もっとも、不申告遺産額が、正味遺産(負債を差し引いた正味遺産額)の25%を超えている場合には、3年の時効期間は6年に伸長されます。

上述のように遺産税の申告をしない場合には、遺産税の納税義務は時効消滅せず、さらに延滞加算税などが付されることになります。

⑶ 確定した税額の徴収

IRSの査定に基づいて確定した税額については、査定から10年で時効により消滅します。もっとも別途書面で延長を合意した場合には、その合意が尊重されます。

 

 

以上、日米の相続税や贈与税の時効について解説しました。二国間のご相談も、経験豊富な当事務所へまずはご相談ください。

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