依頼者:アメリカ在住日本人(被相続人の子)
被相続人:日本在住日本人
1. 事案
日本在住の被相続人が死亡し、日本において相続が開始しました。
依頼者は、生前に被相続人が「日本で暮らす家族に財産を引き継がせたい」と話していたことを知っていました。遺言書は存在しませんが、依頼者は被相続人の遺志を尊重し、アメリカに居住している自身は相続を放棄することにしました。
2. 課題
依頼者は、10年以上前にアメリカ市民権を取得しており、相続開始時には日本国籍を喪失していました。国籍を離脱した元日本人は、国籍離脱により戸籍から除籍されるため戸籍謄本だけでは相続関係を証明することができません。
このような場合は、除籍謄本に記載された者と外国籍に帰化した者の同一性を証明するため、帰化した国が発行する帰化証明書を取得する必要がありました。
また、依頼者は、国籍離脱の届出が未了となっていたため、除籍謄本を取得するため国籍離脱の届出をすることから始める必要がありました。
3. 当事務所の対応
海外居住者が外国籍に帰化した場合、居住地の在外公館を介して国籍離脱の届出を行うため、戸籍から除籍されるまでに一定の時間がかかることが予想されました。
そこで相続放棄の熟慮期間を延長する期間伸長の申立てを被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に申立てしました。
除籍謄本が入手できるまでの間に、依頼者に帰化証明書のCertified Copy (認証謄本) の取得をお願いしていましたが、現地の移民局の手続は非常に煩雑で、職業上、出張の機会が多い依頼者にはこの手続きに対応するための時間をつくることが難しく、帰化証明書のCertified Copyの代わりに、帰化の事実に関する宣誓供述書や米国のパスポートの写しなどを家庭裁判所に提出することにしました。
4. 成果
通常より時間はかかりましたが、依頼者の相続放棄の申述は無事受理され、被相続人の遺志を尊重したいという依頼者の希望通りの遺産分割を実現させることができました。
なお、相続放棄の申述が成功しなかった場合には相続人全員で遺産分割協議を行い、依頼者の取得分をゼロとする分割協議を成立させるという方法があることを依頼者にご提案していました。
ですが、依頼者としてはシンプルに相続権を放棄し、被相続人の遺産分割から完全に離脱することを強く希望されていたため、依頼者に相続放棄が認められたことを非常に喜んでいただくことができました。