アメリカ市民やアメリカ居住外国人は、全世界の所得を申告納税する義務を負います。
一方、アメリカ非居住外国人は、アメリカ国内源泉所得のみ申告納税する必要がありますので、居住者かどうかの判断が重要となります。
1.アメリカの連邦税
アメリカの連邦税は、日本の国税庁に相当する内国歳入庁(Internal Revenue Service: IRS) が課税庁となります。内国歳入法(Internal Revenue Code:IRC)に基づいて課税されます。
2.連邦個人所得税の納税義務者
⑴ 納税義務者の分類と課税対象
連邦個人所得税の納税義務者は、①アメリカ市民(US Citizen)、②アメリカ居住外国人(Resident Alien)、 ③ アメリカ非居住外国人(Nonresident Alien)に分類されます。
① アメリカ市民は、アメリカ国内に居住していなくても全世界所得が課税の対象となります。申告の際にはForm1040を利用します。
② アメリカ居住外国人(永住権者含む)も、全世界所得が課税の対象になります。申告の際にはForm1040を利用します。
③ アメリカ非居住外国人は、原則としてアメリカ国内源泉所得が課税の対象となります。申告の場合にはForm1040-NRを利用します。
⑵ アメリカ居住者
上記の通り、課税対象所得や、控除項目などが異なるため、外国人が居住外国人に該当するか非居住者外国人に該当するかの判定は非常に重要です。
IRCと米国財務省規則はこの点について以下のように規定しています。
なお、日本でも所得税の納税義務者と相続税の納税義務者が異なるように、連邦遺産税の納税義務の判定における「居住者(Resident)」はドミサイルの有無により判断される一方、連邦所得税における「居住者(Resident)」は、これとは基準が異なる点に注意が必要です。
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【居住外国人】
⑴ 永住権を合法的に認められている場合(グリーンカード・テスト)。
⑵ 実質滞在テスト(Substantial Presence Test)を充たしている場合
ア 原則として以下の①②を充たす場合に、居住外国人となります。
① その年のアメリカ滞在日数が累計31日以上で、
② 下記a、b、cの合計が183日以上
a その年のアメリカ滞在日数
b 前年のアメリカ滞在日数×1/3
c 前々年のアメリカ滞在日数×1/6
イ 例外
① その年のアメリカ滞在日数が183日未満で、かつ当該個人が外国にタックスホーム(Tax Home)を持ち、アメリカより当該外国に密接な関係を持っていることが証明されている場合でForm8840(Closer Connection Exception Statement for Aliens)を提出した場合、居住外国人になりません。
② 以下の在留資格(VISA)でアメリカに一時滞在している個人の滞在日数は、実質的滞在日数の計算には含まれません。
ⅰ A(外交官。A – 3を除く)、G(国際機関職員。G – 5を除く)
ⅱ J(教授・交換留学生)Q(国際交流プログラム研究者)F(学生)、M(専門学校学生)で一定の条件(アメリカ入国からの期間等)を充たす場合。
⑶ アメリカ居住者資格を選択した場合
実質滞在テストを充たさない場合でも、アメリカ居住の初年度や最終年度、アメリカ市民やアメリカ居住者と結婚した場合には、アメリカ居住者としての課税を選択できます。
【非居住外国人】
アメリカ市民でも、アメリカ居住外国人でもない場合は、非居住外国人となります。
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⑶ 永住権者(グリーンカードホルダー)
グリーンカードを取得すると、アメリカ居住外国人として全世界の所得の申告義務が発生するため、日本の銀行利子、不動産などの賃料収入、売却益等もアメリカに申告することが必要となります。
もっとも、海外在住者に認められる海外役務所得控除や、二重課税防止のための外国税額控除の適用も認められるため、それらを利用することで、アメリカで課税される所得税を大幅に減らすことができます。
また、グリーンカード保持者には、アメリカ居住外国人と同様、アメリカ国外財産についての申告義務(Foreign Bank and Financial Accounts:FBAR及びForm8938による申告義務)も課せられており、それらを怠ると多額のペナルティが課せられることになっています。
以上、アメリカの連邦所得税の納税義務者の分類について解説しました。二国間のご相談も、経験豊富な当事務所へまずはご相談ください。
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