国際相続コラム

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日本の相続における遺産分割と不動産取得の税務考察

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1.はじめに

日本の相続において、遺産をどのように分割するかということは、相続人にとって重要な決断です。

その中でも、不動産を取得した場合の将来的な売却を考慮した税務リスクについて、正確に理解しておく必要があります。

本コラムでは、具体例を交えて説明します。

2.不動産取得後の売却と税金

日本では、相続により取得した不動産を後に売却する際、取得価格として相続時の評価額ではなく、被相続人が取得したときの購入価格が適用されます。

このため、売却益が大きく計算される可能性があり、高額な譲渡所得税が課される場合があります。この仕組みは、いわゆる“ステップアップ”が存在しないことに起因します。

例えば、以下のケースを考えてみましょう。

3.ケースステディ

遺産総額:1億円(預金:5000万円、評価額5000万円の不動産[被相続人が1000万円で購入])
相続人:2名

この場合で、相続人Aが不動産を、相続人Bが預金をそれぞれ取得するとします。

相続時の評価

相続人A:5000万円の不動産
相続人B:5000万円の預金

売却時の税金負担

相続人Aが不動産を5000万円で売却した場合、課税所得は以下のように計算されます。

1. 取得価格:1000万円(被相続人の購入価格)
2. 売却価格:5000万円
3. 差額(譲渡所得):4000万円

譲渡所得税の計算(長期保有の場合):
• 所得税:15%
• 住民税:5%
• 復興特別所得税:2.1%
税額:4000万円 × (15% + 5% + 2.1%) = 884万円

一方、相続人Bが取得した預金5000万円は非課税資産であり、そのまま使用可能です。

つまり、このケースでは、一見5000万円ずつ平等に遺産分割しように見えますが、不動産には税金がかかることがわかります。

4.特例:相続開始後3年以内の不動産売却

ところで、日本では、相続税の申告期限から3年以内に相続不動産を売却した場合、取得原価に相続税の一部を加えることができる特例があります。

この特例を適用することで、譲渡所得を抑えることが可能ですが、適用には条件があるため注意が必要です。

例えば、先ほどのケースで、当該売却不動産に対して相続税として700万円が課された場合、新たな取得価格は以下のように計算されます。

1. 修正後の取得価格:1000万円 + 700万円 = 1700万円
2. 修正後の譲渡所得:5000万円 – 1700万円 =3300万円

譲渡所得税の計算(長期保有の場合):
3300万円 × (15% + 5% + 2.1%) = 729万3000円

この特例を活用することで、約154万7000円の税負担を軽減することができます。

5.比較と考察

相続人Aは、不動産の売却時に税負担を軽減する方法がある一方、適用条件を満たす必要があります。

また、相続人Bが取得した預金5000万円については、非課税であるため税負担が発生しません。

この結果、相続財産の種類による税務上の影響が大きく異なることがわかります。

不動産を取得する選択は、特例の活用を含め、現金資産よりも慎重な計画が求められることを改めて認識する必要があります。

6.結論

遺産分割において、不動産取得の将来的な税務リスクを十分に考慮することは大変重要です。

特に、不動産の評価額が高い場合や相続人が複数いる場合には、専門家のアドバイスを受けることをお勧めします。

また、最適な遺産分割を実現し、税務リスクを最小限に抑えるこためには、さまざまな特例の活用も理解しておくことが必要です。本コラムが、相続における判断の一助となれば幸いです。

 

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