国際相続コラム

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海外不動産の売却時の源泉徴収と還付 ~課税の仕組みと還付申請のポイント~

  • 知っとくコラム

1.はじめに

近年、日本に住む方が海外の不動産を売却するケースが増えていますが、意外と知られていないのが、売却時に源泉徴収される税金とその還付制度です。

海外で不動産を売却すると、その国の税務当局が売買代金の一定割合を源泉徴収し、納税を求めることが一般的です。

しかし、源泉徴収された税金は最終的な納税額よりも多くなるケースがあり、適切な申告を行うことで還付を受けることが可能です。

本コラムでは、「海外不動産売却時の源泉徴収と還付手続き」について解説します。

2.海外不動産売却と源泉徴収の仕組み

国際税務の考え方

税制には 「属人主義」「属地主義」 という二つの考え方があります。

  • 属人主義(日本の考え方): 日本に住む人は、全世界で得た所得に対して日本で課税される。
  • 属地主義(海外の考え方): その国にある不動産で得た利益は、その国で課税される。

このため、日本に住む人が海外で不動産を売却すると、

  1. 売却した国で源泉徴収される(その国の課税ルールに基づく)
  2. 日本でも課税対象となる(全世界所得課税の原則)

という二重課税の可能性が生じます。

3.海外不動産売却時の源泉徴収

海外では、不動産売却時に売買代金の一定割合を源泉徴収する国が多くあります。

源泉徴収の一般的な仕組み

源泉徴収率
アメリカ 売買代金の約10~15%
スペイン 売買代金の約3%
フランス 売買代金の約19%

 

ポイント:

  • 売却益(キャピタルゲイン)ではなく、売買代金の一定割合が徴収されるため、高額な源泉徴収になる場合がある。
  • 実際の税額が源泉徴収額より少ない場合は、還付請求が可能

4.二重課税の調整と還付手続き

二重課税の回避

海外で源泉徴収された税金は、日本の確定申告で 「外国税額控除」 を利用することで、二重課税を避けることができます。

  • 海外で払った税金を日本の納税額から差し引く ことが可能
  • 還付手続きを行えば、過剰に支払った税金を取り戻せる

もっとも、外国税額控除の金額には上限があり、以下の算定式により計算されます。

控除限度額 = 国内で課される所得税額 × (海外所得 ÷ 総所得)

​​国外所得が生じた年と外国で所得税を納付する年が一致しない場合、外国所得税と所得税の控除限度額との間で生じた差額については繰越が可能です。

海外で払った税金が所得税等の控除限度額を下回る場合と上回る場合の両方とも、翌年以降の確定申告で最大3年間の繰り越しが可能となっています。

 

還付申請の流れ(例:スペイン)

  1. 売却時に源泉徴収される(例:売買代金の3%)
  2. 現地で確定申告を行い、売却益に対する最終的な税額を確定
  3. 過剰に徴収された税金を還付請求する(通常、還付申請から数ヶ月~1年程度で還付される)

5.まとめ

海外不動産の売却時には、現地で源泉徴収される税金がある

源泉徴収額は売却益ではなく売買代金の一定割合で計算されるため、高額になることがある

還付申請を行えば、過剰に徴収された税金を取り戻すことが可能

日本での確定申告時に「外国税額控除」を利用すれば二重課税を回避できる

国によって税率や還付手続きが異なるため、早めの準備が重要

 

海外不動産を売却する際は、適切な税務申告と還付手続きを行うことで、不要な税負担を避けることができますので、専門家に相談しながら、適切な対応をとっていくことが重要です。

※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、具体的な税務申告については税理士等の専門家にご相談ください。

 

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