国際相続コラム

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相続手続において相続人を確定する書類について教えてください

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日本や外国における相続手続で、相続人の範囲の証明はどのような書類によってなされるのか、解説いたします。

1.日本の相続手続での相続人の確定

戸籍による相続人の確定

日本における「相続人を確定する書類」は、一般的には次の通りです。

① 被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本一式

② 各相続人の戸籍謄本

③ 数次相続、代襲相続がある場合には、中間相続人の出生から死亡までの戸籍謄本一式

法改正等に伴い、戸籍は今までに何度か改製されており、その度に新しい形式での戸籍が編纂され、古い戸籍(「改製原戸籍」となります)の内容が新戸籍に移記されます。しかし、全ての情報が移記されるわけではありません。そこで、被相続人の出生から死亡までの全ての戸籍を遡って調査しないと、相続人を見落とすことがありますので注意が必要です。

金融機関での手続や登記をするにあたっては、これら以外に、被相続人の住民票の除票又は戸籍の附票も必要となります。

法定相続情報証明制度

2017(平成29)年5月29日から、全国の登記所(法務局)において「法定相続情報証明制度」が始まりました。

これは登記所(法務局)に上述の被相続人の出生から死亡までの全ての戸籍・除籍謄本・改正原戸籍と、相続関係を一覧にした法定相続情報一覧図を提出することで、登記官により確認された法定相続情報一覧図が5年間保管され、その保管期間中は登記官の認証文付法定相続情報一覧図の写しが無料で交付される制度です。

これまでは相続登記、相続税の支払、預金の払戻しなど各種手続において、それぞれに戸籍謄本等の束を何度も提出する必要がありましたが、法定相続情報一覧図があれば、これで相続人の確定が可能となり、相続手続の手間が軽減されます。

もっとも、法務局が過去の戸籍を遡って相続関係を調べてくれる制度ではなく、あくまでも当事者が必要な戸籍謄本等を取り寄せ、法定相続情報一覧図を作成する必要があります。

また、法定相続情報一覧図の写しの再発行を請求できるのは、当初の申出人本人のみとされています。

被相続人や相続人が外国籍の場合

被相続人や相続人が外国籍である場合、戸籍は存在しません。ですので、被相続人や法定相続人の中に一人でも外国籍者がいる場合や、外国籍であった時期が存在する場合には、法定相続情報証明制度を利用することはできません。

なお、国籍喪失の届出をしていないことで、日本の戸籍がそのまま残っている場合もありますが、実体法上すでに日本国籍を有していないため、この戸籍は不実の戸籍であり、不実の戸籍に基づいて公文書である法定相続情報証明書の作成を登記官に求めることになり、問題が生じます。

2.被相続人である日本在住日本人が海外に遺産を持つ場合の必要書類

外国には日本のような戸籍制度をもつ国は少ないため、通常は被相続人の死亡を証明する書類(除籍謄本や法定相続情報一覧図など)に翻訳文を付して提出し、相続人の確定は、バイタルレコードや戸籍、相続人の宣誓供述書などによって行います。

外国の公的機関が日本の書類の真正を確認するためには、原則として、①文書の署名を一定の公的機関(公証人など)が証明し(Notarization)、②その証明者の署名や公印を、別の公的機関がさらに証明する(Legalization)ことが必要となります。

しかし提出先の国が、ハーグ条約(「外国公文書の認証を不要とする条約」)批准国であれば、アポスティーユを取得すれば、認証があるものと同等のものとして使用することができます。

アメリカ

アメリカでは、被相続人の死亡の事実を公的書類で確認できればよく、被相続人の出生から死亡までの戸籍・除籍謄本の提出は求められません。相続人の確定は、原則として相続人全員による宣誓供述書によって行うことになます。

日本籍の被相続人の死亡の事実は、被相続人の除籍謄本若しくは法定相続情報一覧図の写し(法定相続情報証明)とその翻訳文に、公印確認及び領事認証又はアポスティーユ認証を取得して提出することになります。

EU

EU諸国にも戸籍制度が存在する国はありませんが、EUには、EU相続規則に基づくEU相続証明書制度があります。この証明書はEU内の裁判所や公証人により発行され、被相続人の情報、相続人や受遺者の情報、遺言の有無とその内容、遺産の内容、遺言執行人又は遺産管理人の情報など、詳細な内容が含まれています。この発行のためには日本の戸籍の提出が求められます。

この相続証明書によって、遺言執行人又は遺産管理人の権限が明らかになり、EU内の国際相続の処理が容易となりました。

なお、イギリス(イングランド)では、弁護士が代理してプロベートを申し立てる場合には、死亡証明書の添付は不要とされています。

香港

香港では、裁判所に提出する被相続人の死亡の証明に、日本の戸籍を用いることはできず、法務局が保管する死亡届記載事項証明の提出が必要となります。そして、その翻訳文に公印確認及び領事認証又はアポスティーユ認証を取得して提出することになります。

以上のように、日本における相続手続では、原則として被相続人の出生から死亡までの戸籍に基づいて相続人の確定がなされます。

しかし、被相続人や相続人が日本国籍者でない場合や、日本国籍者でない時期がある場合には、宣誓供述書等による補充が必要となります。

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