国際相続コラム

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日本での国際的な遺留分侵害額請求について教えてください

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日本で発生した相続について、相続人の一人がアメリカ在住の場合、遺留分侵害額請求は可能でしょうか。

例えば、日本居住の父の遺言に、日本とアメリカにあるすべての遺産は日本居住の兄に相続させるとあった場合、アメリカに長年住みアメリカ市民権を取得している弟は、遺留分の請求ができるでしょうか。

遺留分など、遺言による処分で相続権を失った被相続人の配偶者や近親者の保護の問題は、相続準拠法(通則法36条)により、相続開始時の本国法である日本法が適用されるとされています。そのため、被相続人が日本人である場合は、本国法である日本法が準拠法として適用されることになります。

1.日本の遺留分制度

遺留分侵害額請求権の性質

日本には遺言でも奪えない法定相続人の権利として「遺留分侵害額請求権」が認められます。簡単に言うと、たとえ全財産を自分以外に相続させる、という遺言があったとしても、法定相続人には最低限保証された相続分があり、それを請求する権利があるということです(ただし、遺留分があるのは被相続人の兄弟姉妹以外の法定相続人に限られます)。

2018(平成30)年の民法改正前は、遺留分侵害額請求権は「遺留分減殺(げんさい)請求権」と呼ばれて、現物返還が原則とされていました。改正後は、遺留分を侵害した者に対して、金銭での請求と精算が可能になりました。

遺留分侵害額請求権は、遺留分権利者が、相続の開始と遺留分を侵害する贈与又は遺贈があったことを知ったときから1年で時効消滅しますが、相続開始から10年経過することでも消滅しますので、注意が必要です。

遺留分の算定

遺留分算定の対象となる基礎財産の価額は、①相続開始時に被相続人が有していた財産に、②生前贈与をした財産の価額を加え、③債務の全額を控除した金額です。

生前贈与については、ⅰ相続人以外に対する贈与は相続開始前1年間にしたものに限られますし、相続人に対する贈与は相続開始前10年間にしたもので、それが特別受益(婚姻若しくは養子縁組のため、又は生計の資本として受けた贈与のことをいいます)に該当する場合に限られます。

もっとも、贈与の当時、当事者双方が遺留分権利者に損害を与えることを知っていた場合には、この期間制限は適用されません。

本ケースにおいて、例えば被相続人である父が亡くなる10年前までの間に、事業を始める兄に対して父が資金援助を行っていたような場合、これが特別受益に該当しますので、遺留分算定の対象額は、父の死亡時の財産額に兄に対する援助額を足した額となります。

2.遺留分侵害額請求の効果と日本における相続税

法定納期限までに遺産が未分割の場合は、各共同相続人又は包括受遺者が、民法に規定する相続分又は包括遺贈の割合にしたがって遺産を取得したものと仮定して、いったん各相続人又は包括受遺者の相続税を計算して申告・納付する必要があります。

相続税の申告前に遺留分侵害額請求を行った場合で、遺留分侵害額が確定しているときには、遺留分侵害額を反映した相続分に基づいて相続税の申告、納税を行うこととなります。

一方、遺留分侵害額が確定していない場合には、受遺者は、遺留分侵害額の請求がないとした場合の相続分を基礎として相続税を申告、納付します。

その後、遺留分侵害額が確定して支払を行った場合、受遺者は、遺留分侵害額が確定したことを知った日(例:遺留分侵害額請求の判決の確定日)の翌日から4か月以内に、返還した遺留分侵害額に応じて減額更正の請求をします。

 

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