解決事例/依頼者の声

Cases&Voice

最後の住所がアメリカにある被相続人について、日本の家庭裁判所で相続放棄の申述申立てを行ったケース

  • 依頼者の声あり
  • 日本における相続放棄

依頼者:アメリカ在住日本人(被相続人の配偶者・子)と日本在住日本人(被相続人の親・兄弟姉妹)

被相続人:アメリカ在住日本人

1. 事案

被相続人は、ご存命中、日本とアメリカで事業を行い、両国を行き来する生活を送っていましたが、晩年はご家族と同居するアメリカの自宅で療養生活を送り、その後、お亡くなりになりました。

被相続人は、事業の関係で日本とアメリカ双方に多額の負債を抱えており、アメリカの負債については破産手続をとられました。

しかし、日本の負債については処理がなされないまま、相続が開始したことから、弊事務所は、相続人から、日本での相続放棄の申述の依頼をいただきました。

2. 課題

被相続人は、日本の会社の運営のため、度々日本に帰国し、数か月滞在してアメリカに帰るということを繰り返していたため、日本にも住民登録をしておられましたが、生活の実態からするとアメリカの自宅が最後の住所地になると考えられました。

しかしながら、日本の家庭裁判所の国際裁判管轄は、「相続開始の時における被相続人の住所が日本国内にあるとき、住所がない場合又は住所が知れない場合には相続開始の時における被相続人の居所が日本国内にあるとき、居所がない場合又は居所が知れない場合には被相続人が相続開始の前に日本国内に住所を有していたとき(日本国内に最後に住所を有していた後に外国に住所を有していたときを除く。)」(家事事件手続法第3条の11第1項)とあり、海外在住の被相続人の相続放棄に関しては、原則、日本の裁判所は受理ができないこととなります。

他方、先行して行われたアメリカの破産手続きには日本の負債が含まれておらず、また、管理清算主義の考え方を採用するアメリカの相続制度には、相続放棄の制度がありません。

そのため、日本の裁判所所に相続放棄の申述が受理されない場合、日本の負債の承継を回避する手段がないこととなり、相続人にとって非常に不都合となります。

3. 当事務所の対応

前述の通り、被相続人は、日本で営んでいた事業に関係する土地で住民登録を行い、アメリカで療養生活に入った後も、日本の住民票をアメリカの居住地に転出することなくお亡くなりになりました。

そのため、被相続人については日本で除票が取得でき、その届出住所を最後の住所地として日本の家庭裁判所に相続放棄の申述申立てを行おうとすればそれは可能でした。

しかしながら、相続開始以前の生活実態、特に、晩年の生活状況を勘案すると、本事案ではアメリカの自宅住所が最後の住所地と判定される可能性が高いと判断されました。

除票を利用して安易に日本の家庭裁判所に申し立てを行った場合、債権者から「最後の住所地の点に疑義があり、本来、裁判管轄が認められない家庭裁判所が受理した相続放棄の申述は無効である」と争われる可能性もあったため、念のため、被相続人の最後の住所はアメリカにあったことを前提として、日本の家庭裁判所に相続放棄の申述申立てを行う方法を検討しました。

この点、日本の裁判所に管轄権が認められない場合でも、外国での裁判手続が困難なときに、例外的に日本の裁判所の管轄権が認められる「緊急管轄」という制度があります。

前述の通り、本事案では、被相続人の生活実態から最後の住所はアメリカにあると判定され、通常は、日本の裁判所には相続放棄の裁判管轄が認められない可能性がありましたが、最後の住所地であるアメリカでは相続放棄の制度が存在しないため、例外的に「緊急管轄」が認められるべき必要性が高い事案であることを主張し、日本の裁判所(東京家庭裁判所:家事事件手続法7条、同規則6条)に相続放棄の申述の申立てを行いました。

4. 成果

結果として、裁判所は、被相続人が住民登録をしていた地域で事業を行い、日本に滞在していた間はその地を拠点として生活をしていたこと等を理由として、住民登録をした住所が被相続人の最後の住所であると判断した上で、本事案の相続放棄の申述を受理しました。

海外に住所があるとして相続放棄の申立を行い、最終的に裁判所の判断で相続放棄の申立が受理されましたので、万一、相続放棄の効力について後から問題となることがあったとしても、相続人が不利益を被る可能性は低いと思われます。

前述したような特殊な事情により、依頼者にとってより安全な手続で臨みましたので、通常の相続放棄の事案に比べて大分時間も手間もかかってしまいましたが、最終的には、被相続人の相続人にあたる方全員が相続放棄を行うことができました。

5. 依頼者の声

 

2024年に米国に住む兄が亡くなりました。
兄は、日本と米国で会社を経営していましたが、兄が病気になったことで、事業が回らなくなり、亡くなった時は、個人でも多額の借入金がありました。
私たち家族は、兄が亡くなったことでショックを受けていたのと同時に、二国にまたがる遺産相続の対応ができる弁護士の先生もほとんどいらっしゃらない状況で、どうすべきか途方に暮れていました。
そんな中、海外に住む日本人の相続問題解決を行っている海外在住邦人相続協会のホームページを見つけ、藁にすがる思いで、電話相談をしました。
その際、対応してくださった本町国際綜合法律事務所の西原和彦先生が、日本と州ごとに特性のある米国の法律や制度を踏まえて、複雑な私たちの状況を親身になって整理してくださったのを今でも鮮明に覚えています。
こんなに信頼できる弁護士の先生は、他にはいらっしゃらないと感じましたので、すぐに、本町国際綜合法律事務所へ相続放棄に関して依頼させていただきました。
依頼後も、西原先生と阪口先生には、私たち家族の困りごとにも親身になって回答いただき、安心してお任せすることができましたので、感謝してもしきれません。
本当にありがとうございました。
(S・M様)

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