例えば、日本で発生した相続について、アメリカに行ったまま音信不通となった相続人がいる場合、どのように探せばよいでしょうか。
1.戸籍に基づく相続人調査
日本には戸籍制度があります。日本国民については戸籍が作られ、届出に基づいて、出生、認知、養子縁組、婚姻、離婚、死亡及び失踪、国籍の得喪等の事実が記載されますので、被相続人の出生から死亡までの戸籍を調べることで、相続人を調査することは比較的容易です。
日本人が外国に住んでいる場合でも、婚姻、子の出生、死亡など身分関係に変動があった場合や、外国への帰化などにより国籍の変動があった場合は、届出をする義務を負い(郵送若しくは日本大使館や日本領事館などの在外公館にて行います)、その内容は戸籍に記載されることになります。
ただ、届出義務者が届出をしていない場合や、日本国籍を喪失して戸籍が抹消されている場合、若しくは所在が分からない場合などには、戸籍以外による調査が必要となります。
2.戸籍以外での相続人調査
様々な調査方法
外国にいる相続人の所在が分からない場合には、被相続人や親族への手紙の確認や、現地の日本人会に問い合わせることなどが考えられます。
アメリカの場合、AT&T Inc. が運営するAnyWhoやInfoTracerなど様々な個人情報提供サイトが存在しますので、これらのインターネット情報提供サービスを利用することも考えられます。
外務省による所在調査
外国に在留している可能性が高く、長期にわたってその所在が確認されていない日本人の住所・連絡先等については、外務省領事局海外邦人安全課に、在外公館が保有する資料を基に調べる所在調査を依頼することになります。
この調査は、被調査人の配偶者及び三親等以内の親族や、弁護士法23条の2に基づく弁護士会、若しくは裁判所による調査嘱託により行われます。
バイタルレコード
アメリカには戸籍制度はありませんが、基本的な身分関係は、出生証明書(Birth Certificate)、死亡証明書(Death Certificate)、婚姻証明書(Marriage Certificate)、離婚証明書(Divorce Certificate)等のバイタルレコード(Vital Record)で行います。
これらの証明書は、州や郡のVital Record Officeから取り寄せることになりますが、手間のかかる作業になることもあります。取り寄せ先や方法などは、米国疾病管理予防センター(CDC)のウェブサイトから確認が可能です。
3.所在不明の相続人がいる場合
上述の調査でも生存や所在が判明しない海外在住の相続人がいる場合、不在者財産管理人の選任や、住所地に不在で生死が7年間明らかでない場合には家庭裁判所に失踪宣告を申し立てることが考えられます。
不在者財産管理人
不在者の財産の管理に関する審判事件は、不在者の財産が日本国内にあるときに、日本の家庭裁判所に国際裁判管轄が認められます。
失踪宣告
失踪宣告審判事件は、不在者が生存していたと認められる最後の時点において、不在者が日本に住所を有していたとき又は日本の国籍を有していたときに、日本の家庭裁判所に、日本法により失踪宣告をする国際裁判管轄があるとされています。
以上のように、日本では戸籍を用いて相続人調査をしますが、戸籍制度を持たない国では相続人の調査は容易ではありません。ところが、遺産分割の当事者となる相続人が一人でも除外された遺産分割は無効となりますので、相続人の確定は非常に重要です。
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