国際相続コラム

column

日本を含め、世界の公証人についてご説明します

  • エステートプランニング
  • 相続コラム

遺言の作成や、様々な相続手続の場面で関与が必要となる公証人について、日本、アメリカ、欧州それぞれの特徴を解説します。

公証人の持つ知識や権限等は国によって全く異なります。

1.公証人の種類

まず、「公証人」には、

文書の認証、宣誓供述書の作成のみが職務とされるアメリカ型の公証人(Notary Public)と、

②文章の認証、宣誓供述書の作成に加えて公正証書の作成も職務権限とするラテン系の公証人(Notary)があります。

2.日本の公証人

⑴ 公証人の職務と義務

日本の公証人の種類はラテン系のNotaryで、高い専門性を持っています。

国民の権利義務に関係する文書を作成するという公証事務の性格上、公証人には高度な法的知識と豊富な法律実務経験を有していることが必要とされ、裁判官や検察官などを長く務めた人が就任しています。

現在日本には約500名の公証人がいます。公証人は、法務大臣が任命し、国の公務である公証事務を行う一種の公務員とされています。

詳しくはこちらをご参考ください。公証人とは | 日本公証人連合会 (koshonin.gr.jp)

公証人の職務には、①公正証書を作成すること、②私文書に認証を与えること、③定款に認証を与えること、④電磁的記録に認証を与えることに加え、⑤確定日付の付与なども含まれます。

⑵ 認証

公証人が行う「認証」とは、私文書の成立の真正を証明するため、私文書にされた署名または記名押印が本人のものであることを公証人が証明することをいいます。

会社の登記簿謄本や戸籍事項証明書等は公文書ですので、認証の対象になりません。

しかし、公文書を外国語に翻訳した場合には、翻訳者が自身は日本語と当該外国語に堪能であり誠実に翻訳した旨の宣誓書(Declaration)を付しますが、この宣誓書は私署証書にあたりますので、公証人が認証できます。

公文書の謄本も認証の対象になりませんが、これも上述の方法や、謄本は原本の真正なコピーでありその内容どおりの事実が存する旨を、適切な役職にある人の宣言書又は証明書(Certificate)を付すことで認証が可能となります。

例えば、国際的な相続手続では、相続関係や委任関係の証明のため、戸籍謄本や委任状等を翻訳し、宣誓書を付して認証を得ることは多くあります。

⑶ リーガライゼーションとアポスティーユ

外国の公的機関が日本の書類の真正を確認するためには、原則として、①文書の署名を一定の公的機関(公証人など)が証明し(Notarization)、②その証明者の署名や公印を、別の公的機関がさらに証明する(Legalization)ことが必要となります。

具体的には、①公証役場で公証人の認証を受けた後、②その公証人の所属する法務局長から当該公証人が認証したことの証明を受け(公証人押印証明)、次に、③外務省で当該法務局公印の真正について証明を受け(公印確認証明)、最後に④提出先国の駐日大使館・領事館の証明(領事認証)を受けることになります。

もっともこの複雑な手続の簡素化を図るため「外国公文書の認証を不要とする条約(略称:認証不要条約)」(1961年10月5日のハーグ条約)があり、日本も批准しています。本条約批准国間では、条約で定めた形式の外務省のアポスティーユ証明を受ければ、駐日大使館・領事館の証明(領事認証)は必要ありません。

※アポスティーユとは、上記のハーグ条約に基づく付箋(=アポスティーユ)による外務省の証明のことをいいます。

また、北海道(札幌法務局管区内)、宮城県、東京都、神奈川県、静岡県、愛知県、大阪府および福岡県の公証役場では、公証人の認証、法務局の公証人押印証明及び外務省の公印確認またはアポスティーユを一度に取得できるワンストップサービスが利用できます。このサービスを利用すると、法務局や外務省に出向く必要はありません。

外務省ホームページから引用

⑷ 電子公証(オンライン公証)

これまで公証人が紙の文書について行ってきた「認証」や「確定日付の付与」という公証事務を、インターネットを介して電磁的記録(電子文書)でも行っています。認証した電子文書は20年間、電子確定日付に関するデータは50年間保存されます。

電子確定日付の付与は管轄がないため、全国どこの公証役場でも取り扱えますが、地方の6つの公証役場を電子確定日付センターに指定して迅速かつ集中的に処理する体制を整備しています。

3.アメリカの公証人

⑴ 公証人の職務

アメリカの公証人(Notary Public)は、文書の認証と、宣誓供述書の署名が本人の真正な署名であることを証明し記録することを職務とします。公証人は、その州ごとに付与される資格で、その資格取得要件も州によって異なりますが、法曹資格は不要です。

現在、アメリカには約440万人の公証人がおり、多くの法律事務所の事務員が公証人の資格を有しています。公証人が公証業務を行うことができる管轄は、原則として資格が付与された州に限られます。

アメリカでの遺言作成時にも公証人が関与しますが、あくまで署名の真正を証明するに過ぎず、公証人がその内容に関与することがない点で、日本の公証人とは異なります。遺言書の作成及びその内容の担保は弁護士が行うことになります。

⑵ オンライン公証

公証人が署名の真正を確認するためには署名者の面前で確認行為をすることが極めて重要ですが、リモートでの公証を可能とする州もあります。2010 MODEL NOTARY ACT(モデル公証人法)はオンライン公証について規定を置き、バージニア州では、2012(平成24)年7月からインターネット上での本人確認と電子署名の技術を利用したオンライン公証を合法化しました。

コロナ禍を受けて、現在、他の州でもオンライン公証が可能となっています。

オンライン公証でも、公証人は資格を有する州の管轄内にて公証行為を行う必要がありますが、公証を受ける人は、州外にいても、外国にいてもよいとする州もあります。

4.欧州の公証人

⑴ 公証人の権限

欧州には公証人が4万5000人ほどいますが、それぞれの国の法律に基づいて資格や権限は異なります。

日本と同様、文章の認証、宣誓供述書の作成に加えて公正証書の作成も職務権限に含まれます。

公証人は、当事者の署名の横に自署して公印を押印することで、認証手続が完全に遵守されているだけでなく、認証された証書は、署名者の意思、署名者の同一性、契約日とその内容を証明していること、すなわち公正証書の実質的な内容についても責任を負います。

たとえばフランスでは公証人は公務員(Officier Public)であり、裁判所補助官(Officier Ministérial)とされています。公証人は、債権債務を確認する契約書の公証だけでなく、子の認知を確認する証書の作成や養子縁組の同意、生殖補助医療における同意、協議離婚等の場面でも手続に関与します。

⑵ 公正証書の執行力

公正証書は多くの点で裁判所の判決や決定と同様の効力を持ちます。

公正証書のEU内における執行力については、EU加盟国の国内法に優先して直接適用されるEU規則(Regulation)が存在します。

不抗争請求の欧州執行命令に関するEU規則(Regulation (EC) No.805/2004 of the European Parliament and of the Council of 21 April 2004 Creating a European Enforcement Order for uncontested claims)では、日本と同様、執行認諾文言を持つ公正証書の原本に基づいて請求が裁判所で承認され、欧州執行命令証明書(European Enforcement Order Certificate)に基づいて強制執行することができます。

⑶ 相続における公証人の役割

ドイツでは、遺産に不動産がある場合、相続登記手続等に相続証書(Erbschaft)が必要なため、相続証書の作成ができる公証人が相続手続を進めることになります。

フランスでは、公証人の役割は大きく、①相続関係、相続財産の調査、②遺産が分配されるまでの相続財産の管理、③相続税の申告、④相続証書の作成、相続人や受遺者への不動産移転登記手続、⑤相続人、受遺者等への遺産の分配を行います。

このように、相続手続におけるヨーロッパ大陸の国々の公証人の役割は、日本と比べて大きいといえます。

 

以上、世界の公証人について解説をしましたが、各手続において、どのような場面でどのような書類の認証が必要になるかなどは国や制度によって異なるので、公証人の利用が必要になるよう場合は、まずは専門家にご相談されることをお勧めします。

 

国際的なエステートプランニングについても、経験豊富な弊事務所へまずはお気軽にご相談ください。お問い合わせはこちらからどうぞ。

 

  • Twitter
  • LINE
  • hatena
  • Facebook

関連記事

アーカイブ

Contact お問い合わせ