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日本における相続財産の評価方法について教えてください

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日本では、相続や受贈した財産の価額は「取得の時における時価」で評価されますが、公平性の観点から、著しく不適当な結果とならない限り財産評価基本通達に定められた評価方法により画一的に評価されます。

1.遺産分割協議と相続税の計算の場面で用いる相続財産の評価額は異なる

相続財産の評価が必要な場面は、大きく①遺産分割協議と②相続税の計算時に分けられますが、実はそれぞれに用いられる評価額は大きく異なりますので、注意が必要です。

⑴ 遺産分割協議における財産の評価方法

遺産分割協議では、評価の時点は遺産分割時(現実に分割する時点)とする点と、評価額の算定に国税庁の「財産評価基本通達」があまり用いられない点で、相続税法上の評価と大きく異なります。

⑵ 相続税法上の評価方法

日本の相続税法では、相続や受贈した財産の価額は「特別の定め」のあるものを除いて「取得の時における時価」によるとしています。

つまり、相続税の計算においては、遺産の評価額とは、被相続人(亡くなった方)もしくは遺贈者(遺言で遺産を法定相続人以外に贈る方)の死亡の日時点での時価ということになります。

では、「時価」は具体的にどのように決めるのでしょうか。

時価とは、客観的な交換価値のこととされていますが、不動産など価額が変動する財産について一定の基準がなければ評価額が異なることになってしまいます。

そこで、公平性を保つ観点から、日本では国税庁が発表している「財産評価基本通達」に定められた評価方法によって、画一的に財産を評価する取扱いがされています。

以下、不動産と株式について評価方法を説明します。

2.具体的な評価方法

⑴ 不動産(土地)

一般的な評価方法

まず、不動産の評価は土地と家屋で分けて行われます。

土地は、原則として、宅地、田、畑、山林などの地目ごとに評価します(財産評価基本通達7)。

宅地について、路線価が定められている地域では「路線価方式」で、それ以外の地域では「倍率方式」で評価します。

路線価図は国税庁ホームページから確認ができます。

財産評価基準書|国税庁 (nta.go.jp)

路線価も固定資産税評価もその年の1月1日を基準として評価されていますので、不動産は相続の発生した年の1月1日が評価の基準日となります。

路線価は流通価格の80%ほどに設定されていると言われています。そのため、遺産を現金ではなく土地で所有すると、多くの場合、相続財産の評価額を低く抑えることができるため、日本の相続プランニングに不動産はよく用いられます。

小規模宅地等の課税価格計算の特例

相続開始直前に、被相続人(亡くなった方)又は被相続人と生計を一にしていた親族の事業や居住に供されていた建物等の敷地で、一定の要件を充たす場合、その宅地等のうち一定の面積までの部分については、相続税の課税価格に算入する価額のうち一定金額を50%若しくは80%減額することができます。

例えば、同居していた親が亡くなり、子がその自宅を相続するようなケースにおいて、その土地の評価額が1億円だった場合、要件をすべてクリアすれば、相続税の計算上、評価額を最大2、000万円に減額することができるという特例です。

なお、「宅地等」の所在地を限定する規定はなく、アメリカなど海外にある宅地等でも要件を充たす場合には適用できます。

また、相続人及び被相続人について、日本国籍を有していることや日本居住であることも要件とされていません。

減額される割合や限度面積、具体的な要件などは、国税庁のホームページ等を確認してください。

No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)|国税庁 (nta.go.jp)

⑵ 不動産(家屋)

家屋については固定資産税評価額に1.0を乗じて計算することとなっています(財産評価基本通達89)。

また、マンションの場合は、敷地権(土地)の価額と区分所有する建物の価額の合計額により評価します。

つまり、敷地権(土地)の価額についてはマンションの敷地全体の価額にその区分所有する建物に係る敷地権の割合を乗じて計算し、区分所有する建物の価額については固定資産税評価額を用いて評価します。

このような計算方法によると、タワーマンションのように一つの土地に多くの居室が存在する建築物の場合、1戸あたりの土地の持分が小さくなるため、1戸あたりの土地の評価額が低くなります。

また、タワーマンションは、通常、低層階よりも見晴らしの良い高層階の方が物件として人気があり時価評価が高くなる傾向がありますが、上記のように広さで均等に持分を按分する計算方法によるため、高層階になるほど相続税評価と時価評価が乖離することとなります。

そのため、数年前までは、高層階を購入することができる富裕層が、相続税の節税対策としてタワーマンションを利用していました。

しかし、令和4年4月に、それまで土地評価の絶対的基準であった路線価による評価を否定し、マンションの評価額を不動産鑑定に基づき再評価を行う旨の最高裁判決が下され、結果、その事案では3億円以上の追徴課税が課されることとなりました。

これを受け、国税庁は、令和6年(2024年)1月1日以降に相続・贈与で取得した区分所有形態のマンション評価額の計算については新ルールを適用することを発表しました。新ルールでは、マンションの市場価格と相続税評価額の乖離率が1.67倍以上となる場合、相続税評価額が市場価格の60%になるように補正されることになりました。

新ルールによると、築年数が浅く高層階にあるマンションほど、乖離率が大きくなるため、タワーマンションを購入すれば節税になるというような安易なプランは立てづらくなりました。

もっとも、マンションを含む不動産には、現金や有価証券よりも相続税評価額が割安に算出されるというメリットがなくなったわけでありませんので、マンションの所有をエステートプランに組み込む場合は、相続税制に精通した弁護士や税理士とよく相談されることをお勧めします。

⑶ 株式

株式は、①上場株式、②気配相場等のある株式、③取引相場のない株式の3つに分けて評価を行います(財産評価基本通達168以下)。

なお、株式の割当てを受ける権利、株主となる権利、株式無償交付期待権、配当期待権、ストックオプション、上場新株予約権の評価方法も財産評価基本通達に定められています。

上場株式

上場株式は、原則として、上場されている金融商品取引所の公表する課税時期の最終価格(=相続発生日の終値)によって評価します。ただし、課税時期の属する月以前3か月の毎月の最終価格の月平均額のうち最も低い額が相続発生日の終値を超える場合は、その最も低い価額によって評価します。

つまり、「相続発生日の終値」「相続発生月の毎日の終値の月平均額」「相続発生月の前月の毎日の終値の月平均額」「相続発生月の前々月の毎日の終値の月平均額」のうち、いちばん低い価額を用いて計算します。

気配相場等のある株式

気配相場等のある株式は、①登録銘柄及び店頭管理銘柄と②公開途上にある株式の区分に従って評価されます。

①登録銘柄及び店頭管理銘柄の株式の価額は、日本証券業協会の公表する相続発生日の取引価格によって評価しますが、上場株式と同様に、それを相続発生日の属する月以前3か月の毎日の終値の月平均額と比較して、その最も低い価額によって評価します(財産評価基本通達174⑴)。

②公開途上にある株式は、原則として、株式の公開価格によって評価します(同⑵)。

取引相場のない株式

同族株主以外の株主の取得する株式、特定の評価会社の株式以外の株式については、従業員数、総資産価額、直前期末以前1年間における取引金額の要素を用いて大会社、中会社又は小会社に区分して評価されます(財産評価基本通達178)。

ここで、「1株当たりの純資産価額(相続税評価額によって計算した金額)」は、①相続発生日における各資産を財産評価基本通達に定めるところにより評価した価額の合計額から、②相続発生日における各負債の金額の合計額と、③評価差損に対する法人税額等に相当する金額を控除した金額を、相続発生日における発行済み株式数(自己株式数は控除)で割って計算します。

もっとも、中会社と小会社については、株式の取得者とその同族関係者の有する議決権の合計数が評価会社の議決権総数の50%以下である場合には、上記により計算した1株当たりの純資産価額に100分の80を乗じた金額になります(財産評価基本通達185)。

このように、内部留保や資産の含み益を抱えることの多い中小企業について、同族株主が株式を通じて会社財産を完全に支配していない場合には、20%評価額を減額することが認められています。

同族株主以外の株主の取得する株式ついては財産評価基本通達188以下、特定の評価会社の株式以外の株式の評価については財産評価基本通達189以下をご参照ください。

ところで、相続の直後に非上場株式を第三者に相続税評価額の約13倍の売買価格で売却した事案について、税務署が財産評価基本通達による評価は適当でないとして、同通達総則6項により鑑定評価額が適当として更正処分等を実施した事案について、令和6(2024)年1月18日、東京地裁は、租税負担の公平に反する特段の事情が存在しないとして、財産評価通達に定める方法により評価すべきとの判断を示しました。国税当局はこの件について控訴をしているようであり、非上場株式の相続税評価に関してもタワーマンション節税と同じように同通達総則6項が適用されるかどうか、現在、控訴裁判所の判断に注目が集まっています。

 

以上見てきたように、相続財産の評価に関しては新たなルールの適用などもあり、エステートプランには最新の情報を得たうえで慎重に検討する必要があります。

資産の承継や相続問題でお悩みの方は、経験豊富な弊事務所へまずはお気軽にご相談ください。

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