日本の相続税対策として日本から外国に住所や資産を移転させる富裕層に対し、国税庁は、租税回避に対する課税手段として、国外転出時課税制度(出国税)を準備しています。
1.国外転出時課税制度(出国税)
国外転出時課税制度(出国税)は、2015(平成27)年7月1日以後に国外転出(国内に住所及び居所を有しなくなることをいいます)をする居住者が、1億円以上の有価証券や未決済信用取引などの対象資産を所有等している場合には、国外転出時に、その対象資産の「含み益」に所得税を課税する制度です。
日本国内では、たとえば株式や投資信託など有価証券売却益には15%の所得税及び5%の住民税が課税されますが、香港やシンガポールなど有価証券売却益に課税しない国や地域もあるため、これらの国の居住者になることで租税回避をする例が目立ちました。
そこで、税収確保と資産流出防止の観点から国外転出時課税制度が導入されました。
なお一定期間後に帰国する予定がある場合には、納税管理人の届出書や確定申告、担保の提供など一定の条件の下で、最長10年間納税の猶予を受けることが可能です。
また、限定承認を除く贈与・相続・遺贈による資産取得の場合、取得者は引き続きその資産を所有していたものとみなされ、取得価額を引き継ぎますが、国外転出時課税がなされた場合、対象資産の取得価額の洗替えが定められています。
ですので、将来資産譲渡をする場合の譲渡益の計算において用いられる取得価額(原価)は、国外転出時課税がなされた際の評価額となります。
2.相続・贈与時の譲渡所得課税制度
贈与・相続・遺贈の時に1億円以上の有価証券や未決済信用取引などの対象資産を有している居住者が、非居住者へ対象資産の全部又は一部を贈与・相続・遺贈した場合には、原則として、その時に贈与等された対象資産の含み益に対して、事業所得、譲渡所得又は雑所得として所得税が課税されます。
この制度も、国外転出時課税制度と同様、日本の譲渡所得税の租税回避と資産流出防止の観点から導入されました。納税管理人の届出書や確定申告、担保の提供など一定の条件の下で、最長10年間納税の猶予を受けることが可能です。
また、国外転出時課税制度と同様、対象資産の取得価額の洗替えも定められています。
このように、世界各国において資産移転に対する税制の整備は強化されてきており、海外資産を含むエステートプランニングには専門家の関与が欠かせなくなってきています。お困りごとは経験豊富な弊事務所へ、まずはお気軽にご相談ください。
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