国際相続コラム

column

アメリカでの不動産賃貸について、注意点を教えてください

  • エステートプランニング
  • 相続コラム

アメリカでは日本ほど借家人が厚く保護されていませんが、契約内容や差別に対する規制は厳しいため注意が必要です。

ハワイのコンドミニアムを購入して賃貸するケースを例に、不動産賃貸について注意すべき点を解説いたします。

1.日本における不動産賃貸

日本では、不動産賃貸業を行うに当たっては、特別の許可や届出は必要ではありません。

ただし、当該物件において旅館業を行う場合には旅館業法上の許可、住宅宿泊事業(民泊)を行う場合には住宅宿泊事業法に基づく届出・登録が必要となります。

2.アメリカにおける不動産賃貸

⑴ アメリカにおける不動産賃貸の概要

アメリカの不動産賃貸借に関する法律や規則は、原則として州法(もしくは市や郡の法律・規則)により規律され、規制は州、郡、市によって大きく異なります。

一般的に不動産賃貸借には、①期間が定められている定期賃借(Tenancy for Years)、②契約解除の通知がなされるまで一定期間の賃貸借が自動更新される自動更新付定期賃借(Periodic Tenancy)、③賃貸人も賃借人もいつでも賃貸借契約を終了できる随意賃借(Tenancy at Will)、そして④賃貸借契約終了後に、賃貸人による明渡請求までの期間に成立する容認賃借(Holdover Tenant, Tenant at Sufferance)があります(もっとも④は賃貸借契約に基づくものではありません)。

日本の借地借家法のように、賃貸借契約の更新拒絶に厳しい正当事由を要求する法律がないため、原則として、賃貸人は賃貸借契約期間満了に際して賃料増額を求め、賃借人がそれに応じなければ更新せずに契約を終了することが可能です。

もっとも、契約内容の合理性・公平性を担保する法律や規則があることも多く、不動産投資をする州、郡、市における規制について事前に調べておく必要があります。

⑵ 賃借人への差別の禁止

日本では、不動産の買主や賃借人を選択する際に、売主や賃貸人に幅広い自由が認められています。もっとも、国籍を理由に入居予定者との賃貸借契約締結を途中で拒否した事例では、不法行為に基づく損害賠償義務を認めた判決もあります(京都地判平成19年10月2日)。

アメリカでは、連邦法である「1866年公民権法(Civil Rights Act of 1866)」が人種・民族差別に基づく買主・賃借人の差別を禁止しています。

また、「公正住宅取引法(Fair Housing Act)」では、人種、皮膚の色、宗教、出身国、性別、障害者、(高齢者住宅でない限り)子がいるなどの家族状況に基づく買主・賃借人の差別を禁止しています。

多くの州で差別禁止を定める州法が制定されています。ハワイ州でも、「ハワイ差別禁止法」や「ハワイ住宅家主・賃貸借法」に基づいて差別が禁止されていますので注意が必要です。

⑶ ハワイ州における賃貸

ハワイ州で不動産賃貸をする場合には、ビジネス・ライセンスを取得する必要があります。

ハワイ州には、1日もしくは1か月単位での短期賃貸が禁じられている地域(ゾーニング)が定められています。そのため、賃貸を目的として収益物件として購入する場合、その物件がどのゾーニングに所在しているか事前に確認することが必要です。

ハワイにおける建物賃貸には「ハワイ住宅家主・賃貸借法(Hawaii Residential Landlord-Tenant Code)」が適用され、敷金は最大で賃料1か月分しか徴収できず、権利金や礼金の徴収も許されません。また、敷金は顧客信託口座に預金する必要があり、日本のように自由に使うことができません。

ただ、契約終了若しくは賃料変更については柔軟な制度となっており、月極賃貸借契約では45日前の書面通知で契約終了や賃貸料増額が可能ですし、定期賃貸借であれば契約期間終了時に自動的に契約は終了します。

⑷ その他

不動産賃貸をする場合、現地法人を設立すると、万が一の場合に間接有限責任とすることができます。税務や法務リスクを考えて、投資形態を決定することになります。

なお、家賃の遅滞が生じた場合、できるだけ早く退去させる手続をする必要があります。

 

以上、アメリカの不動産賃貸についての注意点を解説を行いました。海外不動産投資に関するお悩みごとは、経験豊富な当事務所へまずはご相談ください。

お問い合わせはこちらからどうぞ。

 

  • Twitter
  • LINE
  • hatena
  • Facebook

関連記事

アーカイブ

Contact お問い合わせ