依頼者:日本在住日本人(被相続人の配偶者)
被相続人:日本在住日本人
1. 事案
被相続人は、欧州に居住し現地に複数の不動産や金融資産を所有していました。また、被相続人は、欧州の方式による遺言を残しておられました。依頼者自身も欧州に長く居住していたため、現地の事情については理解しておられ、当初はご自身で現地の弁護士等に依頼し相続手続を行おうとしておられましたが、現地の弁護士の対応も満足のいくものではなく、ちょうど新型コロナウィルス感染症の流行によるロックダウンの影響を受け、手続がうまく進まず、当方事務所に相談にこられました。
2. 課題
財産が所在する現地の法律では、遺言の有無に関係なく、一定額以上の財産がある場合にはプロベートを行う必要があり、本件もそのようなケースにあたりました。
また、本件では現地国でも日本でも遺産税・相続税の申告が必要となるケースであり、両国での申告・納付に関して調整が必要となりました。
3. 当事務所の対応
ご相談を受け、当事務所の国際ネットワークから現地の信頼できる弁護士をご紹介し、その弁護士とともにすぐにプロベートの申立てや現地の遺産税の申告の準備を行いました。
また、日本の相続税の申告に関しても、日本と欧州の専門家と依頼者の間に入り調整を行いました。
さらに、相続手続の完了後、欧州の財産については現地の法律に基づく信託を設定することとし、現地の弁護士と依頼者との間の調整を行い、日本の財産については公正証書遺言を作成しました。
4. 成果
現地でのプロベートの申立ては順調に行うことができ、その後、現地での相続手続に必要な裁判所の許可状(グラント)を取得することができました。グラントに基づき、現地の弁護士が遺産管理人となって相続手続を順次行っていきました。
また、現地国の遺産税に関しては配偶者控除により納税の必要はありませんでしたが、日本では日本と欧州両方に存在する財産が相続税の課税対象となりました。もっとも、欧州に所在する不動産に小規模宅地等の特例の適用を受けることができたので、かなりの節税効果を得ることができました。