依頼者:アメリカ在住日本人(被相続人の子)
被相続人:日本在住日本人
1. 事案
米国在住の法定相続人は、日本に住む親が亡くなった後、日本に住む依頼者のきょうだいに全ての財産を相続させる内容の遺言を残していることを知りました。親からそのような話を聞いていなかった依頼者は、これに納得できず、きょうだいに対して遺留分侵害額請求を行うこととなりました。
2. 課題
依頼者は、きょうだいに対する遺留分侵害額請求を海外にいながらにして行うため、日本での自らの代理人を必要とされていました。
また、被相続人の財産には建物が含まれていましたが、その敷地は第三者所有のものであり、しかも借地に対する賃料の負担はありませんでした。この点、遺留分額の算定の基礎となる財産の評価の方法が問題となりました。
3. 当事務所の対応
被相続人所有の建物はその敷地の使用に関する対価を負担していないことから、借地権付きの建物として評価することはできず、また築年数からすると建物だけの評価額はかなり低いものとなりました。そこで、使用借権付きの建物として評価することとし、建物そのものの評価額に使用借権の評価額を付加して、相続人Aの遺留分額を計算する交渉を行いました。なお、日本でこのような交渉の代理ができるのは、弁護士と(金額が140万円以下の場合に限り)司法書士だけになります。
4. 成果
相続人Bとの間では、建物の使用借権の評価額に関して、何度か、書簡の往復による意見交換を行う必要がありましたが、最終的には当方の主張する評価額を相続人Bにも認めていただくことができました。
また、当初、相続人Bは、依頼者である相続人Aに対して、遺留分額の計算に関し自身の寄与分の主張をする考えのようでしたが、当方事務所が間に入ったことで寄与分については考慮せずに算定された遺留分額で合意することができました。