依頼者:日本在住日本人(被相続人の子)
被相続人:日本在住日本人
1. 事案
被相続人は、以前、米国に駐在していたことから、米国に預金や投資信託などの財産を所有していました。投資信託については、死亡時受取人の指定(Payable-on-death:POD)が設定されていましたが、預金についてはそのような指定はありませんでした。また、被相続人は、遺言を残していませんでした。
2. 課題
依頼者は、死亡時受取人の指定がなされていなかった米国の預金について現地でのプロベートを、また、PODが設定されていた投資信託については現地の金融機関に対して支払い請求をそれぞれ行う必要がありました。
本件の被相続人は、日本在住の日本人であったため、米国の遺産税の課税対象となるのは米国所在の財産のみとなりましたが(日本所在の財産は課税対象から除外)、非居住・非米国市民として遺産税の高額な基礎控除の適用は受けられず、高額な遺産税の課税の可能性が考えられました。他方、日本の相続税の課税対象は、日本だけでなく米国所在の財産も含まれ、高額な相続税の課税が予想されました。
3. 当事務所の対応
信頼できる米国の弁護士を紹介し、日米の弁護士で連携して現地でのプロベートの申立てを行いました。本件は遺言がありませんでしたので、現地の弁護士を遺産管理人とする選任申立てを行い、預金の回収や遺産税の申告等を行ってもらいました。プロベートの手続が行われている間、現地の弁護士とのやり取りは当方事務所が行い、逐一、依頼者に報告を行っていました。
また、現地の金融機関に対する投資信託の解約、返金の請求も当方事務所が間に入り手続を行いました。
現地の弁護士と日本の税理士との間に当方事務所が入り、双方と綿密に打合せを行い、両国での申告・納税を期限内に完了させました。
4. 成果
米国でのプロベートは一般的に言われているようにやや時間がかかりましたが、すべてを任せていただいたので、依頼者は日本に居ながらにして、スムーズに米国の財産を日本に移転することができました。
また、遺産税に関しては、日米相続税条約の適用により、被相続人の全世界財産の内米国所在の財産が占める割合に応じた基礎控除の適用を受けることができたため、現地の課税はありませんでした。一方で、日本では相続税の課税がありましたが、当方事務所が受任した直後に、依頼者間で一部の遺産分割の合意を速やかに行い納税資金を調達していたため、相続税の納税はスムーズに行うことができました。
5. 依頼者の声
父が海外勤務をしていたことから、外国の銀行に相続する資産がありました。私自身は海外での在住経験もなく、どのような手続きが必要なのかも、全くわかりませんでした。
そのような状況でしたが、先生から必要な手続きを整理してわかりやすく教えていただけましたので、とても助かりました。
また、送られてくる書類や提出する書類も、慣れない英語での記載であったため、先生に目を通していただいたり、アドバイスをいただくことで、安心して記入することができました。
書類を郵送してから、相手国での手続きが完了するまでは、日本での手続きとは違い、長い時間がかかりましたが、その間も先生を通して状況をお知らせいただいたり、海外での手続きに関する慣習や情勢などを含めてご説明いただいたりしたことで、安心して過ごすことができました。