国際相続コラム

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アメリカのプロベート手続きとはどういったものでしょうか

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●アメリカの相続手続きは一般的に「プロベート」と呼ばれる

「プロベート」には①遺言の検認(日本と異なり遺言の有効性まで判断されます)を意味するいわゆる狭義のプロベートと、②遺言検認後の管理清算手続まで含めた相続手続全体を意味するいわゆる広義のプロベート、ふたつの意味があります。
なお、かつてはアメリカでも動産のみがプロベートの対象となり、不動産は相続人に直接移転してプロベートの対象になりませんでしたが、現在は不動産もプロベートの対象となります。
プロベートを管轄する裁判所を一般に「プロベート裁判所」と呼びますが、名称は州によって異なり、たとえばニューヨーク州では「サロゲートコート(Surrogate’s Court)」と呼ばれます。
※プロベートについてはこちら

●プロベート手続きの流れ

※アメリカのプロベート手続きは州法に基づくため、州によって手続は異なりますが、大まかな流れを以下に解説していきます。

1.プロベートの申立て
2.人格代表者の選任(遺言執行状・遺産管理状の発行)
3.人格代表者による遺言執行、遺産管理
4.プロベートの終了

1.プロベートの申立て

遺言がある場合、遺言保管者は、相続開始後、遺言執行者(Executor)やプロベート裁判所に遺言の原本を提出します。また、遺言がない場合も、遺族はプロベート裁判所にプロベートの申立が必要となります。州によっては、プロベートは原則被相続人の死亡から3年以内に開始される必要があります。

2.人格代表者の選任(遺言執行状・遺産管理状の発行)

人格代表者の選任の優先順: 人格代表者(遺言がある場合には遺言執行者(Executor)、遺言がない場合は遺産管理人(Administrator))は、多くの州で、①遺言で指名された者、②受遺者である生存配偶者、③その他の受遺者、④生存配偶者、⑤相続人、⑥相続債権者の順で選任されます。人格代表者を当該州の居住者に限っている州(例:ニューヨーク州)や、配偶者等の一定の親族以外ではアメリカ市民と永住権者に限っている州(例:メリーランド州)などもあります。

遺言執行状、遺産管理状の発行遺言がある場合、遺言の有効性を補助裁判官(Registrar)又は裁判所によって宣言してもらいます。その上で、遺言執行者に対して遺言執行状(Letters Testamentary)が発行され、遺産の管理権限が与えられます。
遺言がない場合には、裁判所や補助裁判官が遺産管理人に遺産管理状(Letters of Administration)を発行し、遺産の管理権限を与えます。

管轄遺言の検認や人格代表者の選任は、まずは被相続人の死亡時のドミサイル地のプロベート裁判所に主たる裁判管轄(主裁判管轄,Primary Jurisdiction)が認められます。また、不動産所在地には補助裁判管轄(Ancillary Jurisdiction)が認められます。

正式プロベート(Formal Probate)と略式プロベート遺言の有効性や人格代表者の選任などについて利害関係者に意見対立があり、その紛争を裁判所における訴訟手続で解決する必要性がある場合などには、通常、正式プロベート(Formal Probate)と呼ばれる厳格な手続が必要となります。正式プロベートでは、プロベート申立て後、知れたる債権者や相続人、受遺者などの利害関係人に、召喚状による裁判期日等の通知がなされるとともに、公告もされます。その後、遺言の成立や有効性、人格代表者の選任などについて争われることになります。

略式プロベート(Informal Probate)は、遺言の有効性や人格代表者の選任などについて争いがない場合に、利害関係者への通知や裁判期日(ヒアリング)を経ることなく、補助裁判官に遺言執行状又は遺産管理状の発行を申し立てる手続です。

正式プロベートと略式プロベートのいずれによるかは、多くの場合、プロベートの申立てをする者が選択します。略式プロベートの開始は他の相続人と受遺者に通知されるため、遺言の有効性や人格代表者の選任に異議のある利害関係者は、略式プロベートを排除するため正式プロベートを申し立てることになります。

3.人格代表者による遺言執行、遺産管理

非監督手続(Unsupervised Administration)と監督手続(Supervised Administration)

人格代表者(遺言がある場合には遺言執行者(Executor)、遺言がない場合は遺産管理人(Administrator))は、遺産財団(Estate)に対して信認義務(Fiduciary Duty)という重い責任を負い、その一方で広範な権限を持ちます。その権限には、遺産の売却や投資、債権者への弁済、被相続人の事業の継続、遺産の分配など、多くの事項を適切に処理する権限が含まれ、原則として、人格代表者はこれらの管理行為を裁判所の許可なく進めることが可能です。このような遺産管理は、一般的に非監督手続(Unsupervised Administration)と呼ばれ、略式プロベートの場合に採用されることが多くなります。
一方、利害関係者間に争いがあり、正式プロベートが申し立てられた場合には、利害関係者や人格代表者の申立てに基づいて、プロベート裁判所の監督の下で人格代表者の遺産管理が行われる監督手続(Supervised Administration)を裁判所から命じられることも多くなります。プロベート裁判所による監督の詳細は遺言執行状や遺産管理状に定められます。

人格代表者の任務

プロベート開始の通知人格代表者は、就任後すべての相続人と受贈者にプロベートの開始を通知する義務を負います。

被相続人の債権債務の調査と遺産目録の作成: 人格代表者は、遺産目録を作成して価額評価をする必要があります。

知れたる債権者に対する相続開始の通知・公告と時効: プロベート開始後、判明しているか又は合理的に確認できる債権者に現実の通知を行うとともに、新聞公告を行う必要があります。一定の期間経過後には、担保が設定されていない相続債務は、相続財産に対して権利主張ができなくなります。

相続債務や遺産税などの支払: 債権者へ相続債務の履行、遺産税の申告・納付をする必要があります。なお、人格代表者は税務申告・納付義務を負っていますので、アメリカの内国歳入庁(IRS)から税金債務が残っていないことを証明するClosing Letterが得られるまで、遺贈の履行や遺産の分配に着手することはリスクを伴います。

権利移転: 遺言書がある場合には遺言に基づく遺贈を履行し、相続人に残余財産を分配し、不動産の権原証書(Deed)を発行して、円滑に権利を承継させます。

最終計算書の作成: 人格代表者はプロベート手続の最終段階で、最終計算書を作成する必要があります。最終計算書には、①遺産リスト、②遺産分配案、③債権者への支払と遺産税等の支払を完了した証拠等が記載されます。

4.プロベートの終了

非監督手続の場合、人格代表者は、債権者への通知、全ての債務の弁済、相続人など全ての関係者に最終計算書を送付した宣誓供述書を裁判所に提出することで、遺産財団を終結します。監督手続の場合、最終計算書を裁判所に提出し、全ての利害関係者への通知とヒアリングを経て、裁判所が分配を命令し、裁判所の終了命令によってプロベート手続は終結します。

以上、見てきたようにアメリカでのプロベート手続きは現地の弁護士や会計士との協働が不可欠です。

プロベートに関しお困りごとがございましたら、現地専門家との強力なネットワークがある弊事務所へまずはお気軽にご相談ください。お問い合わせはこちらからどうぞ

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