国際相続コラム

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暗号資産などデジタル遺産の相続について教えてください

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ビットコイン等をはじめとする仮想通貨(暗号資産)などのデジタル遺産の取扱いについて、日本ではアメリカのような包括的な立法がなされていないため、デジタルデータを想定していない現行法上の枠組みの中で、個別の法律や契約、約款の内容に基づき相続の可否や遺言の可否等についてひとつひとつ検討することになります。

1.日本におけるデジタル遺産

デジタル遺産に関する一般的な法律は存在しない

相続人は、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継します。その対象となる権利義務には、不動産所有権などの「物権」、預金契約などの契約関係や不法行為に基づく損害賠償請求権などの「債権」、知的財産権などの「無体財産権」があります。

デジタルデータは有体物ではないため物権の対象にならず、デジタルデータに所有権を認めることはできません。

また暗号資産(仮想通貨)などを除き、デジタルデータそのものに権利性を認める法律も存在しないため、デジタルデータそのものが相続財産になるともいえません。

デジタルデータに関する契約関係は、被相続人の財産に属する権利義務として承継の対象となり得ますが、承継の可否などは契約内容によります。

暗号資産(crypto-assets)

(1) 法的権利性

「暗号資産」とは、以下のものをいいます。なお、電子記録移転権利を表示するものを除きます。

① 物品を購入し、若しくは借り受け、又は役務の提供を受ける場合に、これらの代価の弁済のために不特定の者に対して使用することができ、かつ、不特定の者を相手方として購入及び売却を行うことができる財産的価値(電子機器その他の物に電子的方法により記録されているものに限り、本邦通貨及び外国通貨並びに通貨建資産を除く)であって、電子情報処理組織を用いて移転することができるもの

② 不特定の者を相手方として①に掲げるものと相互に交換を行うことができる財産的価値(電子機器その他の物に電子的方法により記録されているものに限り、本邦通貨及び外国通貨並びに通貨建資産を除く)であって、電子情報処理組織を用いて移転することができるもの

暗号資産はデジタルデータなので、上述のように所有権の対象にはなりませんし、特定の人や会社に対する債権でもありませんが、資金決済法に基づいて移転可能な財産的価値としての権利性が認められていますので、その点で相続財産として承継の対象となり、遺言の対象にもなり得ると考えられます。

具体的な相続手続は、被相続人が暗号資産の取引所を通じて取引していた場合には、当該取引所の定める手続に従って進めることになります。

(2) 暗号資産に関する税務

・所得税

個人の暗号資産の取引により生じた利益は、原則として雑所得に区分され、所得税の総合課税の対象となります。

なお、雑所得の損失は、給与所得など他の所得と通算することができません。

また、暗号資産同士の交換でも譲渡益が認識される点に注意が必要です。

・相続税

暗号資産は相続税の課税対象になります。

暗号資産の評価方法は国税庁が公表する財産評価基本通達に定めがありませんので、この評価方法に準じて評価することになります。

この点、活発な市場が存在する暗号資産には一定の相場が成立し、客観的な交換価値が明らかになりますので、外国通貨に準じて、取引を行う暗号資産交換業者が公表する取引価額によって評価されることになります。

なお、被相続人等の住所地が暗号資産の所在地と考えられます。

非代替性トークン(Non-Fungible Token)

(1) 法的権利性

非代替性トークン(NFT)とは、暗号資産と同じく、ブロックチェーン上で発行及び取引される、偽造不可能な鑑定書付きのデジタルデータとされています。

デジタルデータは容易にコピーや改ざんが可能ですが、鑑定書をブロックチェーン上で発行することで、オリジナルのデジタルデータに財産的価値が認められるようになりました。

(2) 相続税の課税

金銭に見積ることができる経済的価値があれば、NFTも相続税の課税対象となります。

2.デジタル資産について生前に定めておくこと

暗号資産の価額は極めて不安定ですし、デジタル・アカウント上で金融商品や暗号資産の自動売買をしている場合、アクセスができない間に大きな損害が発生してしまう可能性があります。

そこで、自身が亡くなった後でも、相続人らが相続手続に重要な情報やデジタルデータにアクセスできるような措置を講じておく必要があります。

例えば、デジタル・サービス業者が提供する死後のアクセス設定機能を活用すると同時に、デジタル資産目録を作成し、相続人らが早期にアクセスできるよう、ユーザー名や口座情報、パスワード情報を残しておくとよいでしょう。

また、金銭的価値あるデジタル資産については、相続について遺言で定めておくことも重要です。

 

暗号資産を含む相続問題でお悩みの方は、経験豊富な弊事務所へまずはお気軽にご相談ください。お問い合わせはこちらからどうぞ。

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