国際相続コラム

column

アメリカにおける財産の共有形態にはどのようなものがあるでしょうか

  • エステートプランニング
  • 相続コラム

アメリカでは、州によりますが、一般的に①共有財産権、②合有財産権、③夫婦全部保有、④夫婦共有財産の共有形態が認められています。そして、生存者受取権が認められる持分については、プロベートを経ずに移転します。

下記に詳しく解説いたします。

1.共有形態

⑴ 日本における共有形態

まず、日本においては、

①目的物に対する持分を自由に処分でき、分割請求できる「共有」、

②各共有者の持分の処分は制限され、分割請求も禁止される「合有」、

③目的物を使用・収益できるものの持分が認められない「総有」

という所有形態が認められています。

なお、遺産分割前の共同相続財産は「共有」の特殊な形態とされています。

⑵ アメリカにおける共有形態

アメリカにおいては、

①共有財産権(Tenancy in Common)、

②合有財産権(Joint Tenancy)、

③夫婦全部保有(Tenancy by the Entirety)、

④夫婦共有財産(Community Property)

の共有形態が認められています。

夫婦全部保有(Tenancy by the Entirety)は約半数の州で、夫婦共有財産(Community Property)は9州で採用されています。

各州により権利の詳細は異なりますが、以下、権利の概要について説明します。

共有財産権(Tenancy in Common)

共有財産権は、日本の「共有」と似ており、持分割合を自由に設定でき、持分の処分も共有者各自が自由に行うことができます。

共有者が死亡した場合、その共有持分は相続財産になります。

合有財産権(Joint Tenancy)

合有財産権は、生存中に持分の処分を自由に行えますが、持分権者が死亡した場合、その持分が消滅し、生存者の持分が拡張することで、合有持分が自動的に平等に生存する他の共有者に移転する生存者受取権(Right of Survivorship)が認められる共有形態です。

なお、生存中に合有持分を第三者に譲渡すると、持分の合有状態が解消されて、持分は共有持分となります。

夫婦全部保有(Tenancy by the Entirety)

夫婦全部保有は、夫婦間にのみ認められる共有形態です。

夫婦は配偶者に無断で夫婦全部保有持分を売却したり抵当権を設定することはできず、また夫婦の一方の債権者が夫婦全部保有持分を差し押さえることはできません。

夫婦間には生存者受取権(Right of Survivorship)が認められますので、一方配偶者が亡くなった場合、生存配偶者が自動的に夫婦全部保有の対象財産を取得します。

現在、以下の州で夫婦全部保有財産権が認められますが、対象となる財産の範囲が不動産に限定されるか否かなど、州によって内容は異なりますので注意が必要です。

夫婦全部保有財産権が認められる州

アラスカ,アーカンソー,デラウェア,フロリダ,ハワイ,イリノイ,インディアナ,ケンタッキー,メリーランド,マサチューセッツ,ミシガン,ミシシッピ,ミズーリ,ニュージャージー,ニューヨーク,ノースカロライナ,オハイオ,オクラホマ,オレゴン,ペンシルバニア,ロードアイランド,テネシー,バーモント,ワイオミング

夫婦共有財産(Community Property with / without Right of Survivorship)

日本では、夫婦の一方が婚姻中に自身の名義で取得した財産は、当該配偶者の単独所有財産となります(夫婦別産制といいます)。

アメリカには、日本と同じく夫婦別産制を採用する州もあれば、夫婦共有財産制(Community Property)を採用する州もあります。夫婦共有財産制はフランス法やスペイン法などに起源を持ち、夫婦別産制はイギリスのコモン・ローに起源を持ちます。

夫婦共有財産の制度を採用する州では、夫婦が婚姻期間中に取得した財産は、夫婦の相互努力によって得たものであるという理念に基づき、婚姻期間中に取得した財産は全て夫婦の共有財産となります。

夫婦共有財産制は、2017(平成29)年時点で9つの州(ワシントン州、アイダホ州、ネバダ州、カリフォルニア州、アリゾナ州、ニューメキシコ州、テキサス州、ルイジアナ州、ウィスコンシン州)が採用しており、3つの州(アラスカ州、サウスダコタ州、テネシー州)で夫婦共有財産信託を選択できる制度を採用しています。

なお、ハワイ州は1945(昭和20)年から1949(昭和24)年に夫婦共有財産制が採用され、この時期に夫婦が取得した財産は夫婦共有財産となります。

一方配偶者が死亡すると、夫婦共有財産はまず清算され、生存配偶者は自らの持分権として共有財産の2分の1を所有します。残りの2分の1の持分についてはプロベートの対象となり、被相続人は遺言で処分する権限をもちますが、無遺言の場合には多くの場合、配偶者が法定相続します。

たとえば、カリフォルニア州では、夫婦共有財産の生存配偶者持分は生存配偶者が取得し、被相続人持分は、遺言がある場合には遺言に基づいて、遺言がない場合には生存配偶者が取得します。

2.アメリカの共有制度のまとめ

 

以上のように、アメリカには日本にない共有形態があり、エステートプランニングにはそれらを上手に活用することが必要になります。

 

国際的なエステートプランニングについても、経験豊富な弊事務所へまずはお気軽にご相談ください。お問い合わせはこちらからどうぞ。

 

  • Twitter
  • LINE
  • hatena
  • Facebook

関連記事

アーカイブ

Contact お問い合わせ