タイムシェアとは何か
タイムシェアとは、リゾート施設を毎年一定期間利用できる権利を、複数の購入者に割り当てる仕組みの総称です。固定された週を利用するタイプのほか、利用時期を選択するタイプや、ポイントを利用して複数の施設を予約するタイプなどがあります。権利の法的性質も、不動産持分を取得するものと、利用権・会員権にとどまるものとに分かれます。
購入者は「所有者(オーナー)」と呼ばれますが、実際に何を所有しているのかは契約形態によって大きく異なります。不動産の共有持分そのものを取得する場合もあれば、単なる利用契約(会員権)にとどまる場合もあります。
ただ、不動産の共有持分といっても、日本の法制度で認められている共有持分の考え方とは、異なります。日本法上も、共有者間で利用時期を分担する契約を結ぶことは可能ですが、それによって「特定の週だけを所有する」という独立の物権が生じるわけではありません。アメリカでは、州によっては、不動産のタイムシェアに制定法上の位置づけを与えているところもあります(ハワイ、カリフォルニア、フロリダ等)。
アメリカのタイムシェアを相続するとき、プロベートは必要?
以下では、不動産の共有持分を取得するタイプのタイムシェア持分を有していることを前提とします。
このようなタイムシェアの所有者が亡くなったとき、日本の不動産と同じように、相続人の間で遺産分割協議をすれば名義を変更できるのでしょうか。
実は、日本の遺産分割協議だけでは名義変更はできません。アメリカの不動産については、日本とは根本的に相続の仕組みが異なるため注意が必要です。
アメリカではプロベートという手続がある
日本では、人が亡くなると、その人の財産は原則として相続人に承継されます。その後、複数の相続人がいる場合には、遺産分割協議などによって、誰がどの財産を取得するかを決めていきます。
一方、アメリカでは、原則として、特定の遺産についてプロベートと呼ばれる裁判所主導の管理・清算手続を経てからでなければ、相続人に遺産が分配されません。
プロベートでは、遺言がある場合には遺言執行者(Executor)、遺言がない場合などには遺産管理人(Administrator)などが選任され、亡くなった人の財産や債務を整理し、税金や債務の支払を行ったうえで、残った財産を受遺者や相続人などに分配していきます。州法上、財産上の権利が死亡時に受遺者や相続人に帰属するとされる場合でも、その権利は債権者の権利や遺産管理手続に服します。このように、アメリカのプロベートでは、裁判所の関与のもとで遺産の管理や債務の清算、財産の分配が行われます。
アメリカの不動産は、現地での手続が必要になる
日本に住んでいた人がアメリカに不動産を所有していた場合、日本で遺産分割協議や遺産分割審判を行うこと自体は考えられます。
しかし、アメリカ所在の不動産について、日本で「この不動産は妻が取得する」と決めれば、それだけで現地の名義が妻に変わるわけではありません。アメリカ所在不動産については、実際の所有権移転のために、現地の州で選任又は登録された遺言執行者や遺産管理人による権利証書(Deed)の作成が必要となるため、現地州法に基づくプロベート等の手続が必要になると説明されています。
「誰が相続するかを日本で決めること」と、「アメリカでその人に不動産の権利を移すこと」とは、別の問題として考える必要があります。
タイムシェアも不動産であれば同じ問題が生じる
不動産持分を取得するタイプのタイムシェアについても、基本的には同じ問題が生じます。たとえば、日本に住んでいる父がアメリカのタイムシェアを単独名義で所有したまま亡くなり、妻や子がこれを相続することになったとします。
日本で相続人全員が話し合い、「子がタイムシェアを取得する」と遺産分割協議を成立させたとしても、それだけで現地の不動産名義を書き換えられるとは限りません。タイムシェアが所在する州の法律に従って、プロベートその他の現地手続を行う必要がある可能性があります。
ここまで読むと、「夫婦で持っているタイムシェアでも、一方が亡くなるたびにプロベートが必要なのか」と思われるかもしれません。
しかし、必ずしもそうではありません。
アメリカには、生存者受取権(Right of Survivorship)という仕組みを伴う共有形態があり、このような形で不動産を所有している場合には、死亡した人の持分がプロベートを経ずに生存している共有者へ移転することがあります。
タイムシェアの相続では、単に「誰の名前で購入したか」だけを見るだけでは足りません。どのような所有形態になっているのかを確認する必要があります。
次回は、夫婦などの共有名義になっているタイムシェアについて、プロベートを経ずに権利を承継できる場合を取り上げます。