国際相続コラム

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夫婦名義のタイムシェアならプロベートは不要?
- Right of Survivorship(生存者受取権)とは -

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この記事を書いた人
矢吹 遼子

矢吹 遼子 Ryoko Yabuki

同志社大学法学部法律学科卒業。2009年の弁護士登録以降、企業法務、国際案件、一般民事・離婚・成年後見・刑事・少年事件等、幅広く対応してきました。現在は、英文契約書を含む契約書の作成・レビューのご依頼を多くいただいているほか、日本進出や日本企業との取引を検討されている海外の法人・個人のお客様に対し、日本法に基づいたアドバイスを行うなど、国際法務のご相談も多く受けています。
また、薬害肝炎訴訟やB型肝炎訴訟、HPVワクチン薬害訴訟にも参加し、公益性の高い活動にも積極的に取り組んでいます。

前回の記事(タイムシェアの相続)では、不動産持分を取得するタイプのアメリカのタイムシェアを相続する場合、原則として現地でプロベートなどの手続が問題になることをご説明しました。

タイムシェアとは?相続時にプロベートは必要か

もっとも、夫婦など複数人の名義で所有している場合には、プロベートを経ることなく権利が移転することがあります。そのポイントとなるのが、Right of Survivorship(生存者受取権)です。

Right of Survivorship(生存者受取権)とは、共有名義の財産において、所有者の一方が亡くなった際、その持ち分が遺言や遺産分割の手続きを経ずに、生存する他方の共有者に自動的に移転する権利のことです。

同じ「共有名義」でも取り扱いは同じではない

アメリカでは、不動産を複数人で所有する場合にも、いくつかの異なる所有形態があります。

代表的なものとして、

  • Tenancy in Common(共有財産権)
  • Joint Tenancy(合有財産権)
  • Tenancy by the Entirety(夫婦全部保有)
  • Community Property(夫婦共有財産)

などがあります。

同じように夫婦2人の名前がDeed(権利証書)に記載されていたとしても、どの形態で所有しているかによって、一方が死亡した際の取扱いは異なります。

Joint Tenancy(合有財産権)とRight of Survivorship(生存者受取権)

Joint Tenancy(合有財産権)は一般にRight of Survivorship(生存者受取権)を伴う共有形態ですが、その成立要件やDeedに必要な記載は州法によって異なります。

この場合、共有者の一人が死亡すると、その人の持分を相続人が相続するのではなく、死亡した共有者の持分が消滅し、生存している共有者の権利が拡張します。

たとえば、夫婦がRight of Survivorship(生存者受取権)のあるJoint Tenancy(合有財産権)としてタイムシェアを所有している場合、夫が先に亡くなったとき、夫の持分を妻が「相続」するというよりも、生存している妻が所有者として残るという仕組みになります。このため、夫の持分について通常のプロベートを経て妻へ分配する必要がない場合があります。

夫婦に特有のTenancy by the Entirety(夫婦全部保有)

夫婦の間に限って認められる共有形態として、Tenancy by the Entiretyがあります。

この制度でもRight of Survivorship(生存者受取権)が認められ、一方の配偶者が死亡すると、生存配偶者が対象財産を取得します。もっとも、Tenancy by the Entirety(夫婦全部保有)を認めているかどうか、対象となる財産の範囲は州によって異なります。

注意しなければならないのは、複数人の共有名義であれば、すべてプロベートが不要になるわけではないということです。

たとえばTenancy in Common(共有財産権)では、各共有者が独立した持分を持っており、一人が死亡すると、その人の持分は相続財産になります。

夫婦2人の名前がDeedに記載されているからといって、それだけでプロベートを避けられるとは限りません。実際にどのような共有形態になっているのか、Deedの記載を確認する必要があります。重要なのは、その共有持分にRight of Survivorship(生存者受取権)が認められているかどうかです。

したがって、夫婦名義のタイムシェアについて一方が亡くなった場合には、まずDeedなどを確認し、

「Joint Tenancy(合有財産権)」「Right of Survivorship(生存者受取権)」「Tenancy by the Entirety(夫婦全部保有)」

などの記載があるかを確認することが重要です。

次の世代への承継ではプロベートが必要になることも

上述のとおり、夫婦間で一方が亡くなった場合に、プロベートを経ず、に残った配偶者に自動的に持分が移転することはあります。また、子どもが共有名義人になっている場合には、共有形態によってはプロベートを経ずに子どもに権利が移ることもあります。

しかし、その後、最終的に残った単独所有者が亡くなった時点では、もはやRight of Survivorship(生存者受取権)を及ぼす相手がいないため、通常の相続(遺言または法定相続)によって承継されることになります。そしてこの相続手続きは、海外に所在する不動産についての相続であるため、日本に居住する相続人であっても、原則として不動産所在地の州の裁判所でのプロベートを経る必要があるのが実務上の一般的な扱いです。(ただ、アメリカには信託その他のプロベートを回避するための仕組みもあるため、「共有名義人以外への承継=必ずプロベート」とまではいえないのですが、ここでの詳述は割愛いたします)

「将来、子どもにこの手続をさせたくない」「管理費などの負担を次の世代に残したくない」と考える場合には、相続が発生する前にタイムシェアを手放すことを検討することも一つの選択肢です。

次回は、海外タイムシェアを手放したい場合に、どのような点を確認すべきかについてご説明します。

【アメリカに不動産・口座がある方へ】遺言だけでは守れない、米国資産のプロベートを回避する基本ガイド

実はアメリカでは、遺言書があっても裁判所による遺産管理手続き「プロベート」を回避することはできません。プロベートに入ると、資産凍結による長期化、弁護士費用などのコスト増加、財産内容が裁判記録として公開されるリスクが生じます。
本資料では、国際相続を専門とする弁護士が、以下のポイントをわかりやすく解説します。

・プロベート対象となる「検認財産」と対象外の「非検認財産」の違い
・生前信託(Revocable Inter Vivos Trust)によるプロベート回避の仕組み
・POD口座・TOD登録など、受取人指定によるスムーズな資産承継
・共有名義(Joint Tenancy等)を活用した回避策
・プロベートを回避しても発生しうる日米双方の税務上の注意点

  • 米国に不動産、預金、証券口座などをお持ちの方、またはご家族が海外に資産を残される予定のある方は、ぜひご一読ください。
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