依頼者:アメリカ在住日本人(被相続人の子)
被相続人:日本在住日本人
1. 事案
日本在住の被相続人には、米国在住の依頼者のほかに、障害のある子が一人います。被相続人には配偶者はおらず、この子(依頼者のきょうだい)と同居し面倒をみておられました。被相続人が逝去され、相続人らで相続手続を行うことになりました。
2. 課題
長年、アメリカに居住していた依頼者には、被相続人の資産や債務をほとんど把握できておらず、単純相続をすべきか、相続放棄をすべきか、当初は判断が困難でした。また、依頼者が単純相続することになったとしても、日本在住の相続人には、被相続人にかわり、財産管理や日常の生活のサポートをしてくれる人が必要な状態であったため、遺産分割協議に入る前にこのサポート体制を整える必要がありました。
3. 当事務所の対応
当方事務所でも依頼者が把握している情報をもとに遺産調査を行いましたが、十分な情報ではなかったため、当方の調査の結果だけをみて、依頼者が単純相続するか、相続放棄をするかの決定をするには不安がありました。依頼者からはじめてご相談を受けた時点で、日本在住の相続人について成年後見制度を利用することが決定していましたので、被後見人(日本在住の相続人)の財産管理の一環として成年後見人が行う遺産調査の結果を待つことにしました。そのため、まず家庭裁判所に対して、相続放棄等の熟慮期間の伸長の申立てを行いました。成年後見人の選任、調査の完了まで数か月の期間を要したので、再度、伸長の申立てを行う必要がありました。
その後、成年後見人と交渉を行い、実質的な遺産分割協議の内容について合意をした後、家庭裁判所に遺産分割調停の申立てを行いました。海外在住者の場合、遺産分割協議書を作成する際には、サイン証明や在留証明など、通常の相続手続とは異なるものが必要となり、準備がやや面倒、複雑となるデメリットがあります。このデメリットを回避するため、遺産分割協議書の代わりに遺産分割協議の内容を書面化した調停調書を取得することとし、本件では、事前に家庭裁判所と打ち合わせをしたうえで、遺産分割調停を申立てました。
4. 成果
依頼者は、自分が海外にいることで、遺産の調査・管理や日本在住の相続人のケアについて直接かかわることができず、日本にいる親族からの伝聞による報告や説明を受けるだけで、正確な情報にアクセスできずストレスや不安を感じておられました。当方事務所が代理人となり、金融機関、成年後見人、親族等とのやり取りの窓口や調査を行うことで、依頼者には、アメリカに居ながらにして正確な情報をもとに単純相続や遺産分割協議について意志決定を行い、納得のできる解決を図っていただくことができました。
5. 依頼者の声
外国での暮らしが長くなり、頼れる人がいない中、阪口先生のきめ細かいご対応、本当に助かりました。
私の希望や親族の関係を考慮に入れながら、専門的な知見を活かした案を提示して下さり、大変心強かったです。
弁護士の先生の門戸をたたくのは少し敷居が高いものですが、阪口先生のお人柄や丁寧なご対応のおかげで安心して相談ができました。
心から感謝申し上げます。
(依頼者K.O様)